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2009年2月2日浅間山噴火の噴煙はどのような風に乗ったか?

山川修治(日本大学文理学部地球システム科学科)


図1 噴火直後2009年2月2日03時の地上天気図


(気象庁による)

浅間山噴火当時の天気図(図1)を見ると,前日日本各地に雨や雪を降らせた低気圧がアリューシャン付近で猛発達しています(960hPa)。そのアリューシャン低気圧と,シベリア高気圧から西日本付近へ分離してきた移動性高気圧(1028hPa)との間で気圧傾度が大きくなり,関東地方で強い北西風が吹いていたことがわかります。 当時のつくば市館野のエマグラムを調べてみました。噴火の約4時間前の状況が図1,噴火の約7時間後の状況が図2です。今回の小規模噴火が起こった01:51頃は図1と図2の中間的状態であったわけですが,噴煙の高さが山頂部から約2kmという情報を参考にして,図1の高度約4.5km(550hPa)に注目してみると,その高度付近から上層では北西の風が下層に比べ一段と強くなっていることがわかります。また,図2と図3の比較により,高度4.5kmの風が時間の経過とともに強まったことから,噴火当時の風速は約20〜25m/s(55〜70km/h)であったと推測されますが,これは実測された噴煙の移動速度65km/hとほぼ一致します。噴煙高度は噴火エネルギーによりますが,5.5km(500hPa)付近に逆転層があったこと(図2)も,風速の増大とともに,噴煙をさらに上層へ進入させなかった副次的な要因となったと考えられます。


図2 噴火前2月1日21時の館野における エマグラム

(Wyoming Univ.による)

図3 噴火後2月2日09時の館野におけるエマグラム

(Wyoming Univ.による)

エマグラムの見方・解説

左縦軸は気圧と高度を、横軸は気温をあらわしています。 右縦軸には、左縦軸で示された気圧(高度)での風向・風速(長い矢羽が5m/s、旗印が25m/s)が示され、鉛直方向に風が徐々に変化する様子がわかります。 図中に3本の直線・曲線が引かれていますが、緑線は乾燥断熱線、青線が湿潤断熱線、紫線が等飽和混合比線を示しています。 そして、太い実線が、その地点で実際に観測された値になります。 太い実線のうち、右側は気温、左側は露点温度で、その間隔が広いときが乾燥、狭いほど湿潤になります。 気温は一般に上空ほど低温になりますが、上空ほど高温になる部分があり、それが逆転層といわれ、安定した気層となっています。

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2009年2月9日更新

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