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浅間火山2009年2月2日噴火に伴う火山灰の降灰状況(2009年2月10日)

宮地直道(日本大学文理学部地球システム科学科)

浅間火山が2月2日に噴火した直後より,降灰調査へのご協力をお願いしたところ多くの方々から火山灰試料を提供いただきました.詳細な分析結果は後日の報告に譲るとして,ここでは皆様の調査時に得られた何枚かの写真をご紹介するとともに,現時点で考えられる今回の噴火の特徴について述べたいと思います.


写真1 長野県軽井沢町千ヶ滝西区より見た浅間山(地球システム科学科 長井雅史氏 撮影)

2月4日12時に浅間山の南東方向5.9km地点から撮影した写真です.よく見ると山頂周辺には雪面上に黒い噴出物とこれを覆う灰色の噴出物の2種類があるように見え,黒い噴出物の後に灰色の噴出物が出たことを伺わせます.また,灰色の火山灰の方がより東方(右側)に分布しているようにも見えます.(写真はクリックで拡大)


写真2 長野県軽井沢町千ヶ滝西区の降灰状況(地球システム科学科 長井雅史氏 撮影)

2月4日13時に浅間山の南東方向5.4km地点で撮影したものです.写真1で黒色の噴出物の分布域の中心のほぼ延長上にあたります.噴火後2日余り経過して雪面上ということもあり,火山灰の粒子の表面は融雪水により洗われた可能があるものの,ここでは黒色の粒子が大半で白色の粒子はほとんど目立ちません.雪面上には直径1cm程度の角レキがまばらに点在しています.四角く掘りとった部分は定面積で火山灰を採取した地点です.


写真3 長野県軽井沢町軽井沢の降灰状況(潟pレオ・ラボ 藤根 久氏 撮影)

2月2日19時に浅間山の南東9km地点で撮影した写真です.直径1〜2mm以上の粒子がより細粒な白色火山灰に取り巻かれ粉まぶしのような状態になり堆積している様子が分かります.定規をあてた10cm四方の周囲の火山灰は取り除いてあります.


写真4 群馬県松井田町碓井軽井沢ICの降灰状況(地球システム科学科 長井雅史氏 撮影)

2月3日16時に浅間山の南東18km地点で撮影した写真です.ここでは細粒な火山灰が直径2〜3mmの塊になっています.このような塊を凝集粒子と呼びます.凝集粒子は空中を漂う噴煙の中で火山ガスの水分などにより火山灰同士が結合して形成され,塊のまま噴煙から地上に落下します.落下した直後は水分を含んでいますが,時間が経つと乾燥して普通,塊は崩れてしまいます.なお.写真左側の部分は降灰をはき取ってあります.



写真5 埼玉県秩父市中村町の降灰状況(埼玉県立本庄高校定時制 中村正芳氏・岩田芳夫氏撮影)

2月7日浅間山の南東66kmの地点で撮影した写真です.噴火後,5日が経過したにも関わらず車のフロントガラス一面に火山灰が付着しています.またボンネットの縁には凝集粒子と思われる火山灰の塊が残っている様子もわかります.秩父市は火山灰の分布の主軸上と推定され,確かに堆積量は多いのですが,このように火山灰が残っているということは,火山灰の中に粒子同士を付着させる物質が何か含まれていることが推定されます.



 

写真6 東京都稲城市矢野口(地球システム科学科4年 阿萬祐典君 撮影)

2月2日22時に浅間山の南東123kmの地点で撮影した写真です.左側の写真は降灰したままの状況を撮影したものです.よく見ると金属面上にむらはあるもののほぼ一様に堆積するほこりのような細粒な火山灰のほかに直径0.2〜0.5o程度の凝集粒子がまばらに堆積している様子を確認できます(写真6左).この写真の約50cm右側で2日10時に定面積試料を採取しました.当然,試料採取直後には火山灰は残っていませんでした.ところが, 22時にこの場所をみるとまばらではありますが直径0.5〜1.0o程度の新たな凝集粒子を確認できました(写真6右).すなわち,10時から22時の間に新たな降灰があったということになります.聞き取り調査によれば同地点では8時頃に掃除をしたものの17時頃,掃除跡に降灰を確認したとの証言もあります.このことから稲城市では噴火発生の1:51から10時までの間の他に10時から17時までの間にも降灰があったと思われます.この日に府中〜新宿にかけて活動していた学生や卒業生に聞くと花粉や黄砂が降ったときのように目のかゆみなどの異常を感じる人が多かったようです.これは単に一度降った火山灰が舞い上がっただけではなく,降灰が降り続いていたためだったからかもしれません.


以上のように.今回の噴火では最初に黒色の火山灰や火山レキを南東側に噴出し,その後細粒な白色火山灰をやや東南東方向に噴出したと思われます.また,気象庁の報道発表(2日9:00)では浅間山は最初の1:51の噴火以降も8時頃まで火山灰の噴出が続いていたとのことから,東京には1:51分の爆発的?噴火による火山灰と,それ以降8時頃まで続いた噴火によりもたらされた火山灰が降灰した可能性が高くなりました.これらの点については改めて議論したいと思います.調査にあたりお世話になった多数の方々に篤く御礼申し上げます.


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2009年2月10日更新

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