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浅間山2009年2月2日噴火の火山灰中に含まれていた鉱物(2009年2月27日)

竹村貴人・宮地直道(日本大学文理学部地球システム科学科)

浅間山から2月2日に噴出した火山灰には,地下のマグマが冷えてできた結晶(鉱物)の破片や新鮮な溶岩片などが含まれています(浅間山2009年2月2日噴火の火山灰粒子−遠方と山腹の試料の比較−).鉱物にどのような種類のものがあるは,偏光顕微鏡を使って概ね分かります.ただし,小量しか含まれないものや偏光顕微鏡では分かりにくいものもあり,このような場合はX線回折装置を(XRD)を用いて調べます. XRDはX線を照射して物質を構成する原子の種類や結晶構造を調べる装置です.そこで,今回は浅間山山麓の軽井沢町軽井沢で噴火直後の2月2日に乾燥状態で採取された火山灰中の鉱物を日本大学文理学部のXRD装置(リガク製RINT2100S)を用いて調べました.採取した火山灰は,乾燥状態のままメノウの乳鉢で微粉砕して,不定方位法により分析しました.


図1 軽井沢で採取された2月2日火山灰のXRDチャート


その結果,試料にはアノーサイト(anorthite, CaAl2Si2O8)やアルバイト(albite: NaAlSi3O8)などの斜長石(P)のほかに,硬石膏(anhydrite: A, CaSO4)やクリストバラト(cristobalite: C, SiO2)などの鉱物が含まれていました(図1).斜長石は浅間山の安山岩質溶岩に普通に含まれる鉱物で,偏光顕微鏡でも確認されています.高い反射のピークが認められることから,これが試料中で最も多く含まれている鉱物と思われます.硬石膏は白〜灰白色の硫酸塩鉱物で,マグマから直接晶出したり,火山ガス中の二酸化硫黄と斜長石や溶岩の石基部分に含まれるカルシウムとが高温条件下での反応により形成したりします.ところで,硬石膏に似た鉱物に石膏(gypsum, CaSO4・2H2O)があります.石膏は堆積岩中や二酸化硫黄と溶岩が水を介して低温状態で反応した場合などに認められ,1日あたり1〜4万トンという極めて多量の二酸化硫黄を含む火山ガスが噴出した三宅島2000年噴火の際には火山灰中でも確認されています.ただし,今回の試料には確認できませんでした.クリストバライトは白色の酸化鉱物で,これもマグマから直接晶出したり,火山ガスや熱水と呼ばれるマグマの熱により加熱された地下水と溶岩などが反応して主要な元素が溶脱して形成されたりします.
今回確認された硬石膏やクリストバライトがどのようにして形成されたかは明らかではありませんが,一つの可能性として火口付近での変質活動により形成されたことが考えられます.浅間山では2004年9月の噴火以降,1日あたり概ね1〜4千トンの二酸化硫黄を放出しており (気象庁気象統計情報)),変質活動はこのような火山ガスの放出過程で進んだ可能性が考えられます.変質鉱物は脆いため噴火時にはその大半が破砕されて,細粒な破片となり,細粒な火山灰を作りだしたのかもしれません.ただし,硬石膏,クリストバライトともに,変質活動には関係しないマグマ由来のものである可能性もあり,今後,水蒸気爆発の際に確認できる粘土鉱物の有無なども含め検討する必要があります.




謝辞

  地球システム科学科学生の杉中佑輔君,前田美紀さん,竹之内寛至君には試料の分析等の作業にあたってもらいました.(株)パレオ・ラボの藤根 久氏には試料を提供いただきました.日本大学文理学部物理生命システム科学科の橋本拓也教授には分析機器の使用をお許しいただきました.これらの方々に記して御礼申し上げます.



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2009年2月10日更新

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