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速報5 浅間山2004年11月14日噴火噴出物の調査報告

長井雅史(日本大学文理学部地球システム科学科)

1.肉眼的な特徴
2.降灰分布
3.粒径分布

天候,清掃状況(01時には清掃車出動)から,東京大学地震研究所火山噴火予知研究推進センターと協議のうえ,遠方の堆積物の降灰量と試料採集を中心におこなった.2004年11月15日04:00-07:30 前橋渋川周辺の降灰調査.10:00-16:30子持村,渋川市,榛東村から榛名町,倉渕村にかけて降灰調査.この間06時20分前後から12時ごろまで降雨があり,堆積物の流出(特に細粒火山灰粒子)が著しい.

倉渕村にて,東京大学地震研究所の吉本氏・金子氏と合流,その後同研究所浅間火山観測所に向かい,鬼押し出し道路の火山礫散在地点に案内してもらう.

1.肉眼的な特徴

11月14日の噴出物は,主に多面体状・剥片状の新鮮な灰色角礫で構成される.発泡は悪いが,わずかに発泡(最大1mm程度の気泡)しているものが少量認められる.そのほか,赤色の礫や,わずかに変質した礫も含まれる.火口近傍域(20km以内)では,細礫以上のサイズの粒子が,また遠方域(30-50km)では火山砂が目立つ.顕著な凝集構造(球形火山豆石,凝集火山灰,泡入り火山灰層など)は認められなかった.

2.降灰分布

降灰分布の南限は,倉渕村松井田町境界地蔵峠付近,榛名町室田北方,前橋市内県庁・グリーンドーム付近,北限は倉渕村権田付近,渋川市北部国道17号線吾妻橋付近にあり,狭い幅をもって東から東北東方向に分布している(図1).降灰軸は東,遠方ではやや東北東方向で,倉渕村中尾南方,三ノ倉,箕郷町善地付近,前橋市総合スポーツセンター付近を通過する.降雨前に火山灰が採集できた前橋市総合スポーツセンター(46km)の降灰量は0.0378 kg/m2であった.降雨後に採取した倉渕村中尾(23km,ほとんど砂から細礫サイズ)の降灰量は0.0358kg/m2で,火口に近い後者の方が降灰量が少ない.降雨によってかなりの細粒粒子が損失したものと推定される.

図1 2004年11月14日噴火の降灰分布(アイソプレスマップ).

火口近傍域の降灰限界は,東京大学地震研究所の情報提供を参考にした.

3.粒径分布

最大粒径の分布軸は東方向で降灰軸よりやや南よりに位置し,倉渕村中尾南方,三ノ倉,箕郷町善地付近,前橋市敷島公園付近を通過する.峰の茶屋北方鬼押し出し道路料金所北側(火口から4.5km)では,最大粒径は45mm,霧積(13km)では20mm(国土交通省利根水系砂防事務所が採取した試料に基づく),倉渕村中尾南方(22km)では13mm,箕郷町善地付近(35km)では5mm,前橋市敷島公園北・老人福祉センター(46km)では3.5mm,そして,確認した範囲ではもっとも遠方にあたる大間々(67km)では1.4mm(国土交通省渡良瀬河川事務所大間々砂防出張所が採取した試料に基づく)であった.各機関による9月1日噴火の降灰分布・粒径分布に比べると今回はやや多い・大きい傾向にあるように見える.ただし9月1日噴火の10km以上の範囲は測定点がきわめて少ないので注意が必要である.降灰軸と粒径軸のずれは上空のWの風向で運ばれた粒子群が降下中に低層のWSWの風に流され,その際に終端速度の遅い細粒粒子ほどENE方向にシフトした結果とみられる.これは当日の風系状況と調和的な結果である.

図2 2004年11月14日噴火に伴うレキの最大粒径分布.

各地点の測定値は,1m2以上の範囲における最大サイズの粒子3個の長径を平均したもの.なお,霧積の値は,国土交通省・利根水系砂防事務所が採取した試料から,また大間々の値は,国土交通省・渡良瀬河川事務所大間々砂防出張所が採取した試料から,それぞれ求めた.

謝辞

国土交通省利根水系砂防事務所,および同省渡良瀬河川事務所大間々砂防出張所には,貴重な試料を提供していただきました.記して御礼申し上げます.

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